ノア☆ザミ

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罪深き血-4

一夜を明けて次の日のお昼ごろ。
「お前ならいくらだって許可するさ…紅一」
「…感謝いたします…陛下…。」
王陛下である、紅桜紅蓮。未熟を嫌い完璧を求める厳格なお方だ…。
后を三人おり、内二人は子を産んでおり、男子は二人、女子は一人ずついるお方だ。
私は言いたいことを抑えて、一礼する。
…汚らわしいって感じてるのに、それでもすがってしまう…
「では、少しのお時間…書庫をお借りします」
「うむ…、」
なにか言いたげだった王陛下…
私は気付かぬふりをして、書庫へと直行した…
「劉…許可入ったよ」
「うん分かった…」
かなり珍しいのだろうか、周りはチラチラ見てきて鬱陶しい
…恐らく気付いてる人はいるな…あからさますぎる
「調べものしたら、さっさと資料集めよう…」
「……。」

王室書庫にて…
「…とりあえず、目ぼしいもの調べたけど…全然ね」
王室書庫なら、なにかしら手掛かりあるかなぁ…と思ったけど…全然だ…
ちょっと気になったと言えば…『魔の紅玉』くらいだが…特に手掛かりになることでもなかったな…
「これ完全に詰んだなぁ…」
劉も手当たり次第探ってるけど、来ないとこ見るとそれらしいの見つかっていないんだろうし…
「あっ」
「え?」
声がし、思わず顔を上げると、あの時の変死体現場にいた警備隊体調の戸崎さんだ…
直ぐに睨むように口を開く
「何故貴様がいる…死天屋」
「なにってこの間の変死体についてですよ。戸崎さん」
「…あぁ…あれな…あれは犯人は見つかっていないが、取り敢えず事故ってことになったぞ」
「あぁ…でしょうな…変に恐怖心煽るよりも良いでしょう…」
「お前のとこにも通告書送ったはずだが?」
「は?貰っていないですが?」
「あれ?」
今で分かったが、戸崎さんは敵対心はあるものの公私を区別する人だ。
いくら、仕事の手柄を横取り状態でも、それは自身の未熟さ故と、努力する面もある。
この表情を見る限り…送ったのは事実。でも私の所には来ていない…
「…あんの野郎…」
真っ先に浮かんだのは王陛下。
情報不足になると、王宮に来るのは知ってるはず…マジでふざけないで欲しい…
人が依頼を遂行してるときの私情を挟むのは鬱陶しい他はない…
「まぁ…なんだかな…」
戸崎は口を開く。
「なぁ…人ってどうして争いを生むんだ…。同じ人でありながらも…」
少し驚いた…やはり誰がも思うのだろう…
何故、人は争い合うのか
「…簡単な話…人は『自分が正しい』と思うから争うんです。どんな理由があれど、…人は小さきことで大きな争いを生む…。」
間を置いて、光の無い濁りきった桔梗色の瞳で見つめ口を開く
「…人と言うのは、自分が生きるのに一生懸命。良くも悪くも、"今日"と言う日を生き抜く。"かつての私も"、そうだったように…」
「…お前…、!?いや待て、お前まさかっ」


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戸崎は"あること"に気づく。
私の特徴が、とある人と同じであることに…
「では、私は失礼します」
なにかを言い切る前に遮る
ペコッと一礼し背を向ける…
「………まさか、…」

ある一定の距離を進みながら自分に言い聞かせてた
「…大丈夫…、私は二度と誰にも負けない。母さんのように、どんな苦難も強く気高くやりきってみせる…。あの時のような失態は二度と…っ」
私は……、あんな過去に囚われるわけにはっ…
ザザッと忌みな記憶が甦る。


───25年前の春頃

「紅一~」
「はーい姐さん」
私は遊郭で育った…
男の欲と女の見栄だらけの世界…
私のように「どっかの女郎が産んじまって売った子」だってよくある話だった…
それでも、私は恵まれた方だ…
優しい姐さんたち…ちょっと怖い婆…、黒くも悲しい末路を辿りがちな場所でも気高く生きるべきだ…

 
そんな幸せはある日突然壊れた…

 
「んぅ!?」
外で薔薇の花びらを毟っている最中に私は人拐いにあった…
これも良くある話だった…
だから隙を見て逃げ出そうと思った…
でも、

───出来なかった…。

直ぐに牢屋のような場所に放り込まれた
「いたぁ!?!!」
「お前が、アイツの子か…」
顔はよく見えなかったけど、声からして男の人だった…
「えっ?」
と顔を上げた瞬間…顔に物凄い衝撃が走った…
私は吹っ飛んだ…後から来る痛み、熱、そして床に飛び散る血…
「えっえ───がっ!」
私は、訳が解らなかった…どうして殴られてるのか、どうして慇懃を受けてるのかさえ…訳が解らないまま、どのぐらい経ったのだろう…
気付けば、私は生気を亡くしかけてた…
…視界がボヤけてる…、あぁ…いつの間にか気絶してた…
食べ物もそうだ…軽く五日間食べさせてくれないときがあった…それでも生きた…最初こそ、たまたましぶといんだと思ってた…。
でも"異能の類"と気付いたのは、10歳を迎える頃だった…
赤毛の男の人も、気づき始めてた…
どっかの本で読んだことあった…
『異能は生まれつきで、当人しか持たない特別な力。ただ種類にも寄るが、力が開花されるまで気づかないことが多い。大体の開花時期は10歳前後。遅くても13,4までである』
結構早い段階で開花された、私の異能…どうやら不死のようだ…
だから生きてる限り、この地獄は続く…
───嫌だ…そんなの嫌っ…
そう思ってたら懐からナニか落ちてきた…
桔梗のお花の簪…、確か、姐さんが言ってた…
『───この簪はアンタの母さんが持ってたヤツだからね?大事にするんだよ?』
簪が鋭利な刃物のように光る…
母さんの形見、母さんが残した宝物…
頭では分かってた、でも───
気づいたときには、赤毛の男に突き刺した…激痛に悶える男を見て、恐怖心よりも気分が上がった。
牢屋のとこにあった岩で何度も叩きつけた
何度も、何度も…気付けば男は動かなくなった…
私は殺してしまったことよりも安堵した…

───あぁ…やっと、解放される…とね。


私は首を横に振り、気持ちを切り替えた
「…ダメだ、今はあの時のことは…」
ふと、黒く桜と桔梗の刻印の本に目が止まる…
「(紅桜王家・葬儀書…。最も紅桜家の血が濃い人と、王位を継いだ王子の国母のみのヤツか…)」
何気に…あの時のことを、特にあの男の事が…
気になるわけじゃない…恨んでいないわけでもない…でも、少し調べてみた…
最近で葬儀したのは…、
「(やっぱりあの男か…大分落ち着いたとはいえ、やはりあの人以上の嫌悪感があるな…)」
顔写真を見ながら次の文に目が止まる
「は?」

―――紅桜紅斗。紅桜国歴2100年9月19日没28歳。第三分家出身。
火葬前に遺体喪失するも、葬儀は予定通り決行。

「…遺体喪失って…そんなのあり得る?」
遺体が消えたってことは聞かされてなかった…
多分、あちら側の配慮なのだろうけど…遺体がなきゃ、棺の中身はどう偽装したんだ?いや、中身自体は替えがたまたまあったんだろうけど…
悶々考えてると後ろから声をかけられた…
「コウ…ここにいたんだ…探したよ」
「!劉…」
劉は私の持ってる本に視線を向ける
「……。葬儀書…?」
「あ、いや…ちょっとね…」
私は咄嗟に本棚に仕舞った…
そうだ、もう例の変死体は終えたんだ…警備隊もそう言ってるし…
終わったなら、深入りする必要はない…
「…例の変死体、事故死扱いになったらしいよ…王陛下も耳に入ってるだろうに…」
やり方が汚い…敢えて面談”させる”状況を作ってんだ…
「あ、そう…じゃあ、これは要らないか…」
劉の手元には手書きの書類があるの
「え、この辺の資料全部目を通したの?」
王室書庫なだけであって、歴代国王に関する資料や、【異能者】の特徴、妖魔の存在、そして人間の戸籍など色々ある…有力そうな資料が増える為に、拡大化が進んでる。
「?…うん、要点だけ書き写しただけれど…」
…何かがざわつく…
「…やっぱり、凄いね。劉は…」
「…コウ…?」
教育が大幅に遅れた為に、文字の読み書きがいまいちな私と違って、劉は漆子の特性を理解した上の、記憶力と研究心…人間性と情熱には欠けても、器量の良さなら誰がも羨ましく手に取る…
…何故だろう、少しモヤモヤする…
「なんでもない…あの事件が終わったなら深入りする必要はない…帰ろう。」
「…解った」
劉の気にしていない様子に少しイラッとしてしまう
…ダメだ、感情的になるな…
冷静になれ、感情を制御出来ないのは未熟者だ…
「……」
外へ出て頭を冷やそうにも、何故だかモヤモヤが消えない…
全然、頭と心の整理が出来ない自分に嫌気を指してきた…
その時、声をかけられた
「…有力そうな情報は手に入ったか」
「王陛下…」
王陛下の名を呼ぶだけでもストレスになるのに、また対面するなんて…、
「杜撰な通告の仕方もなさったお陰で無駄な時間を得ましたよ」
「…それはすまない…」
申し訳なさそうな表情になる王陛下に、イラつきが加速した…
…なんで被害者面するのさ、まるで私が悪者みたいじゃないか…
「申し訳ないと思うなら、私情を挟むのも控えて頂けませんか?こちらも暇ではないんでね」
劉がいる前なのに、周りの人たちもいるのに、…
はたから見たら、王陛下に無礼な態度をしてる人に見えてもおかしくない。
「それは、私も申し訳ないと思ってる…ただ、」
―――あぁ、やめて、…ッ
これ以上、抑えさせないで…
「私は、ただ父親として、紅一の心配を…」
私はその言葉に、

―――何かがプッツンと切れた…

「なにをいまさら…」
「…コウ?」
積もり積もった怒り、失望、…悲しみが…
「私を…母を、見捨てた癖に…」
何かが、止まらなくなる…
すでに劉の声が届かない…
「っ、私が受けた五年間の屈辱と苦痛…」
怒りのあまり、思いっ切り睨む
目から頬にかけてビシッとひび割れる、異変を感じたのは恐らく劉だけではない
「解ろうとしなかった癖に、今さら…っ今さら親ぶるな!!!!!」
…そこから、意識が途絶えた…、誰かが私を呼ぶ声がした気がする

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───堕神ノ化身、目覚メヨ

続く