ノア☆ザミ

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罪深き血-3

「あれ?」
「あ、起きた」
目を覚まして最初の光景は、見覚えのある天井…と声をかけてきた劉…
…あれ、私…最初調べものして…、上にある資料を取ろうとして…あれ?
「コウ、踏み台から落っこちたあとに気絶したんだけど…覚えてる?」
「上にある資料を取ろうとしたとこまでは…」
「ビックリしたよ…。急に大きな音したもんだから…」
「ご、ごめん…」
「一昨日の貧血が治りきってないでしょ?残りの調べものしとくから、コウは座っててね」
「う、うん…」
五段くらいある本棚を全て目を通す劉…
彼、要領の良い漆子だからってのもあるでしょうけど…要領にも対するモノってのがある…記憶力の良さや…
…産んでくれた両親について問いても『覚えてない』としか答えない…まぁ、人身売買されたんだし…無理もないか…
分厚い資料を何冊かまとめて近付いてきた
「一応、妥協案として見つけた資料をいくつか…」
「…う~んこの人かな?名はデヴィッドさん。異能名は…」
「『カマイタチ』…?…風使いかな?」
「異能者ってことですからね…四大属性の内の風が特技のようで…、まぁ異能者は初級属性しか使えないですがね…。」
「…行ってみる?丁度住所も書いてあるし…」
「そうですね…」
劉の提案に即賛成し身仕度する。
…劉から『倒れると困るから』と行く前にご飯食べさせられた…
お腹空いてるわけでもないのに…(汗)


住所を記す場所はかなり田舎…。
ご近所の方々にデヴィッドさんのいるとこをお聞きしたら…
「亡くなった?」
「数日前にね。それも殺された形跡もあるって…」
…ということは以前の変死体前後の話っぽいな…
劉が口を開く
「どんな感じかお聞きしても?」
「ん~とね…新聞の話だと、心臓を抉られてたって。しかも生きたまま抉られてた可能性があるって…えっぐいわ…」
いつぞやの生け贄の方法みたいだな…
少年少女を中心にする生け贄の…
「誰かに恨まれるような人だったとか?」
「ないない。田舎じゃ有名になるほど人柄が良い人だった」
「そうなんだよねぇ…独身だが気さくでいい人だったんだ…惜しい人亡くしたな…」
「そうですか…」
いい人でも…恨まれることなくても、嫌われることはある。
少しでも嫌悪があれば、いずれ恨みに変わるしな…
「未だに犯人解らないらしいしね…」
「本当に怖いわー」
…確かに…今の王、紅桜さまの時世になってから、大分落ち着きはあるものの全員が肯定的ではない…
新たな制度で失った職業の人たちもいる…
特に先代時代のころは悪徳な人身売買が当たり前のようにあった…
人攫いから口減らしなど…劉の場合は口減らしだ…
現在は人攫いによる人身売買は禁じてるが、口減らしによる人身売買は合法とされてる…。
結局のとこ、妥協された法廷だな…意味もない…。
「あんたたちも気を付けな」
「!…はいありがとうございます…」
私たちの正体も知らずに、ただただ身の安全を心配する…
嬉しいはずだろうが…私は虚しいだけだった…
笑みを浮かべ悟られないように心掛けた…
村の人たちに一礼し、引き上げた…
「…容疑者が殺されてるとなると…振り出しだね…」
「うん…そうだね」
やっと掴めたと思った情報が、いとも簡単に消し去られた…
こりゃ…一筋縄ではいかないな…本当、面倒くさい依頼を入れてくれるな…王陛下は…

とその時…

「貴様が茶々丸だな?」
「!そうですが…」
「我が主の命により、貴様の御命を頂戴する」
フードを深く被り表情が見えないが…それでも解る…
剣を向ける威圧感…
からして男っぽいが…
仕事上、恨まれるようなことしてるのは確かだ…
だが、こうして殺しに来る奴の殆どが返り討ちに遭ってる…
どんな腕利きでもだ…
「!」
その時、劉が奇襲。
「なんなの?いきなり押し掛けてきての一言が『命を頂戴する』…?だったら、殺されても文句言えないよね…?」
あの劉が真顔で目を鋭く睨み付ける
「せめて名前くらい言ったら?…殺しに来るくらいならそんぐらいの敬意はあっても良いでしょ?」
「………」
男は黙って剣を下ろし、フードを外した


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年は20代半ば辺りか?
癖っ毛で、つり目で瞳孔は縦長…目元には化粧してある。
そして口を開く
「俺は越場一郎。これでいいか?」
「随分、横暴な態度だね…まぁ、いいけどっ」
劉が越場の背後へ高速移動し、持ってた仕込み杖を振り上げた
越場は驚きもせず持ってた剣で受け止める。
お互いの刃物がぶつかり合い、お互い弾かれる。
直ぐに劉は突き技を繰り出すと、越場は簡単にかわす
「…は、早い…」
当然、私は何もできず、立ちすくむだけだった…
…自身の無力さを感じてしまい、情けないやら悔しさやらにぐっ思わず拳が出来てしまう…
「コウ!!」
「!?」
劉が声を上げる。
背後から殺気を感じ咄嗟に避けるが、避けきれずザシュッと首筋を斬られる
背後へと下がる一息し越場は口を開く
「貴様…不死者か…あの方と同じ…」
「……」
大抵の人が死期を悟るときに気付く…
そうだ…私を殺そうとする人が、逆に殺される理由。それは私が強いんじゃない…、私が死ぬこと出来ない体だからだ。
私自身も気付いたのは、10歳ごろだ…。
「ちっ…あの方に報告させるか…」
勝ち目がないこと分かったのか、引き下がった。
劉は追うこともせず、私のとこに近付く
「コウ!…首から血が…」
「っ…ごめん、油断したから…」
清潔な手拭きを止血に押さえる…
切り傷だから血自体は止まるが、問題は出血なのだ。
私の異能…『細胞を不滅化にさせる』と言うものだ…
たけど、簡単ではない…、細胞と言うのは繊細で、時間ごとに新たに作られるもの…。私の異能はそれ自体を否定的にさせるようなもんだ…。
上手く行けば、不死者として生きれる…上手く行けばだが…
「取り敢えず戻ろうか…」
「うん…」
死天相談店にて…
「襲撃されたんだって?」
白銀と…側に蒼がいた
蒼は妖魔と人間の子である。この御時世、存在がバレたら速攻で処刑される…その為我々が匿う形で従業員としている。
混血の最大の特徴は二つ…妖魔の髪色と、深紅の金眼。
常にずっと無気力。喋ることも表情が動くこともない。
「えぇ…痛っ」
「あ、ごめん…」
越場に受けた斬撃が痛む…
劉がなるべく血に触れないように手袋をしつつ消毒液を染み込んだ綿毛を押し付ける
ピリッと痛み、思わず声を上げると劉が口を開いた
そして続け劉が喋る
「…コウ…全然血が止まんない上に…毒の匂いがする…」
「あぁ…だから、不老不死だってバレたんだね…」
「少なからず…殺す気はあったということか…」
幸いなのが出血は少なめだ…それでも危険なのは変わりないがな…
劉は薬学を精通してる…だからか毒の区別が解る。
…裏方に薬草の畑を作るくらいだからな…
「取り合えず、止血剤を付ける…半日ごとに張り替えるね。」
「半日って短くね?」
白銀の言うことは最もだ…
それって一日で二回張り替えるやつ…
「心配性だなぁ…」
「別に…」
フイッとそっぽ向く
照れてるわけでも不貞腐れるわけもない…。
ただ、虚無に近い…
「しかし、参ったねぇ…やっと容疑者を絞り出せたと思ったのに…」
「えぇ…しかも、抉られた心臓が見つかっていないというね…」
「無差別殺人なら、裏社会では良くあるけどね…恐怖心を煽る為か、ただ自身の欲求を満たしたいか…」
白銀はそう呟く…
確かにそうだ…深く考えてもしょうがない…。
…しょうがない…気が進まないけど…
「…劉、白銀…明日辺り、王宮に向かう」
「!…珍しいね…」
白銀の言う通り、私はあの人のいる王宮には行こうと思わない…
「しょうがないさ…警備隊の調べた資料じゃ、少なすぎる…となると、」
「最もと情報を集まる王宮書庫に行くって訳ね?」
白銀はそう呟く
「えぇ…」
私は小さく答えた


続く