ノア☆ザミ

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罪深き血-6

───夢を見た…
…誰?長い茶髪の女性…?顔は見えないけど…表情が解る…
何で泣いてるの…?なんで申し訳なさそうな顔してるの?
なに言ってる…?

「───_____、ごめんねっ…」



目を覚ましたら、見慣れない白い天井…
「……?」
あれ、私は…
「は、そうだ私、う"っ!?」
思い出した私は思わず体を起こした。
その衝動か、身体中にビキッと痛んだ…
「……そうか…私、…?」
すると、左手に温もりを感じた
そちらに目を向けると…そこにいたのは劉ではなく、
「…王陛下…。」
私の手を握りながら規則性のある寝息を立てて寝ていた…
見ると、それらしい傷痕と、ガーゼを貼っていた…
傷だらけになっても、必死に私を呼び掛けたんだと解る…
「…っ…馬鹿じゃない…私一人で思い込んで…っ、」
私は自分自身を悔いた…
どれだけ拒否られても、どれだけ嫌われても、父親として、心を開いてくれるのを待ち続けたんだと…
それなのに、私は意地になって、自分の方が子供だ…大人にならなきゃって思ってたのに、まだまだだ…
…声を押し殺して泣き続けた…

「……。」
部屋の外でただ大人しく押し殺す泣き声を聞く



私は王室直属の主治医から数日の絶対安静を言い渡された…
邪神化の最大のリスクは【魂】の穢れらしいけど、…私の場合は体力消耗と精神的な意味も含めて休めた。
劉が着替えとか、暇つぶし用の読書を持ってきてくれたお陰で比較的に休めた
そんな中、ほぼ毎日…王陛下がお見舞いに来てくれた…
「…紅一、どうだ…」
「…お、う、…えと」
「…無理して呼ぶ必要はない…ゆっくりでいいさ…」
近くに置いてあった椅子に座り、落ち着く
私は比較的に気になっていたことを聞く…
「…ところで、私…邪神化したってことは…『自然の囁き』を持ってたんだな…」
「…そうだな…それも、高度な方だ…お前の母君、…和泉が、神霊界の使者だとは思わなかったがな…」
「……そう、…」
私は不思議と驚かなかった…
異能持ちの出産率は、両親共が異能者の場合は50%ほど…片方だけの場合は25%…。
全くない場合でも5~10%の確率だ。
そもそも、母親はどこ出身かも知らない…
恐らく、王陛下も…
「…紅一…お前が嫌じゃなければ…会ってくれるか?」
王陛下は突然なこと言い出した…
「え?」
私は思わず目を見開く
「お前の、…弟妹たちと…」
言葉を選びつつ少し遠慮がちに聞く王陛下…
そりゃそうだ…私の母親は、その和泉って人だけで…王陛下の言う、私の弟妹…完全に異母弟妹に当たる。
「…まぁ、会うくらいなら…」
「!…意外だな…聞いといてだが、私の子と言うことで嫌ってるだろうと思ってた…」
「……確かに嫌っていたのは否定しません…ですが、今の状況…、会うくらいならいいかなと…それでも嫌いだったら会う必要なくなるだけですし…」
「…そうか…」
少し嬉しそうに答えた
「まぁ、その心配はないとは思うが…」
小さく言った言葉には聞き取れなかった


──同時刻。
「チッ…予想外なことが起きた…まさか、あのガキが神の子だったとは…」
長い赤毛の男がそう呟く…
「あのまま不仲にしとけば、操りやすかったのに…クソッ!」
苛立ちのあまり物に当たる…
「絶対に許せねぇ…、紅桜紅蓮とくそガキ…」
「…………」
越場はその様子を傍観する



大分体が回復してきた頃…
「コウ…口開けて」
「あ」
「うん…上気道感染症もないし…、大丈夫そうだね」
「…ねぇ…これ意味あるの?普通に主治医を呼んだ方が良くない?」
赤毛を夜会巻きした少女が声をかける
「ガキは黙って」
「劉…彼女はお姫さまなんだからさ…」
そう彼女は紅桜紅火。
王陛下の長女。
…まぁ、私の異母妹ですね…。
それも二十歳ほど離れた…
「お兄様、よくこんな意地悪なお方と一緒におりますのね…」
「はは…まぁ、一応は同僚だし…」
「同僚だからね~」
舌を出し小馬鹿にする劉
「っ~…お父さま~お母さま~!劉さまが私を馬鹿にするっ~」
涙声で告げる
私は飽きれながら、劉に問いかけた
「15も離れてれる子に対抗心燃やさないで…」
「コウは僕のだもん」
「はいはい」
…全く、私が女性と話すだけで機嫌悪くなるんだから…どんだけ女嫌いなんだか…
そういや、王陛下の奥さま方及び子供たちからの反応なんだが…
「紅一~♡」
「兄上~♡」
あ、来た
「「退院おめでとう~!♡」」
「うぐっ」
ドーンと体当たりの如くに抱き着かれた
怪しまれるか、と思ったけどそんなことなかった
あとで聞くと「あの厳格な王陛下に愛人なんて作れるわけない」とのこと。
まぁ、信頼てか…悪く思われなかった…一方的に異母弟妹を嫌ってた自分が馬鹿らしい…
「……」
あ。敵意を感じる。
…劉から…(汗)
退院出来た私は再びいつもの仕事に戻った
私の方を見てひそひそ話をする人たちを見て、私の邪神化で色々と明らかになってきたようだ…
「……例の騒動で…私の存在、…もとい婚外子の存在が明らかになりましたね…」
「そうだけど…大丈夫なんか?…取材とかそういう奴等が来るんじゃない?」
「それは心配ないかと…王陛下のことです…しっかり根回ししてるでしょう…。王陛下からの忠告を無視するほど図太い神経はしてないですし…」
それはそうと…またか…
「いらないって言ってるのに…」
「まぁまぁ良いんじゃない?」
あの騒動以来、王陛下個人の依頼が受けるようになった。
依頼内容は単純な『子供たちのお遊び相手。』
子ども相手なら、と劉と白銀と蒼も同行させた。
流石に店番がいないので、『closed』をかけてきた。
(私情で絡まないでって言ったのに、"依頼"で片付ける強引ぷりは、正しく王さまだな…)
無論、依頼だから依頼料払うとまで言ってきたが、流石に個人依頼ではな…っと断ったけど、『じゃあ今までの慰謝料とでも思ってくれ』だって…お金で解決する問題じゃないけど、まぁバイト並の給金だと思う他なかった…
…あの強引と言う名の意地は恐らく私にも似たんだな…(汗)

着くとおもいっきり疲れた様子の王陛下に会った…
そしてなんだか騒がしい…
「あ…すまない…」
「いいえ…緊急ですか?」
「いや…どうやら王宮内に不審者が出たと…」
「不審者…」
「だから!!俺は!!怪しいもんじゃねぇつってんだろ!!つか乱暴にすんな!!傷に響くっ!」
「…は?」
白銀は声の主と姿を見て唖然…
「く…クロちゃん…なにしてんの…?(汗)」
「「「「「え??」」」」」
全員同じタイミングで反応…
まぁ、白銀の知り合いと言うことで解放してもらった…
傷だらけなのでひとまず治療を受けさせ事情聴取を受ける
聞かれる立場なのに、偉そうに腕を組みふんぞり返ってる
「俺は黒鉄。捨てられた身だから親なんていねぇ…」
「偉そうにするの相変わらず…だからボク以外との付き合い疎いんだよ…」
「うるせぇ」
白銀の発言で黒鉄が舌を出して中指立てた…
…挑発の仕方が子供…絶対に王家に敵対心とか抱いてない…
恐らくここにいる人たち同じ事を思っただろう…
あっさり身柄を確保した…
「ハク…彼とはどういう知り合いで?」
「…同じ師範の元に育った…、まぁ、兄弟子。」
「なるほど…」
思わずチラッと黒鉄に目を向ける
「んだよ…」
目が合ったために威圧と威嚇を含めた口調で反応する
…170~180くらいかな…
少なくとも劉よりは低いほうだな…
「いいえ…ところで怪我は大丈夫ですか?」
「問題ねぇよ…このていdい"っ!?」
「バカじゃん…」
白銀が黒鉄の腕を掴み上に上げた
「いででででっ!!腕を上げさせんな響くっ!!」
「……相変わらず無駄なプライド…茶々丸…」
「はい?」
「無理矢理にでも医療室に連れてって」
「あ、はい」

ぎゃあぎゃあ騒ぐ黒鉄さんに一発KOさせた白銀は少し恐怖を感じた…

一時間が経過すると…
すんなり戻ってきた黒鉄…
しかし勝負事になると、
「おーいハク!!てめぇ、負けたら承知しねぇからな!!」
「負けるかよバーカ!!!」
「あ”!?バカって言うほうがバカって知らねぇのかよ!!」
「そういうとこがバカだつってんのよ!!バカ野郎!!」
双方のくだらな過ぎる痴話喧嘩に見てる人たちは呆れかえってる
私はその様子をみて、感じた…
「ねぇ、劉…」
「?」
「”幼馴染”は扱いやすいって聞いたことがあったけど、そうでもないんだなぁ…って思ってさ…」
「…?」
「ほら、幼馴染ってのはさ、お互い知り尽くしてる仲じゃん…。だからさ、目的は分からなくてもどんなことしようとしてるかは解るってやつ…」
「…それって、もし僕が裏切ろうとしたら解る的な?」
「、…ごめん。変なこと言って…」
「いや、でも…気になることはあったんでしょ…たとえば、義姉さんが残した夢とか…」
「……劉って解ってて言わないよね…。」
「聞かれなかったからね…。僕には一切湧かないなぁ…裏切る理由とか、喧嘩を起こす理由とか…結局は些細なことじゃん…」
劉は感情を含まないが正論にも近い言葉に、悩んでる私が馬鹿らしくなった…
「…私が婚外子で、第一子であることは。あの騒動で公開された…私は当分、籠の中の鳥だな…それも、王陛下が崩御されるまでは続くな…」
「信頼する上で守ってほしいならそう言えば良いし…信頼まで無くても、信用があるなら使えばいい…それだけでしょ?」
「…劉、あの店守ってね。少なくとも王陛下が崩御されるまでは…」
「…コウって時々、王陛下に対しての殺意あるよね…あ、無い方がおかしいか…」
「フフフ」
解ってるじゃないかと言わんばかりに笑う。
「…でも、私は王位は継がない…。当然だけど私は第三分家の子息を殺した前科があるし、周りの反対もあるでしょうし…。」
「……コウの意思なら僕はなにも言わないし聞かない…。どんなとこにいても僕はコウから離れる気ない…」
劉の通常運転に少し安心した…
前から解っていたことだ…劉は私なんかいなくてもやっていけること…でも生きてはいられない…
他人の気持ちなんて、言葉にしなきゃ解らない…今回の王陛下との件もそうだ…
「紅一…一緒に外へ行かないか…」
「良いですが、…仕事とかは大丈夫ですか?」
「一段落ついたし、…なにより…せっかく父子として、揃ったんだから…どうかとも思って…」
「…!」
陛下が少し照れ臭そうに話す…
意図に気付いた私は少し笑ってしまうも、后たちが言ってた『厳格に見える陛下はただの不器用』って言ってたのが分かる…
「えぇ…いいですよ。皆さん弟妹たちとも仲良くしてますし…」
白銀は持ち前の明るさで、弟妹たちと仲良くしてますし…
劉が私の方に向けると軽く「楽しんできて」とジェスチャーを送った


王家から見た景色は確かに美しかった…
自分が『裏の人間』で無ければ、純粋に賞賛に値してただろうに…

「───。」
「!?」
ガシャンと金属音と共に拘束された…
「あ~ぁ…そのまま仲違いしてくれれば殺りやすかったのにさ…計算外だわ…」
「っ…」
聞き覚えのある声に、背筋が凍るような恐怖に陥った…
「…!」
「紅斗…っ」
そこにいたのは…18年前に死んだ筈の第三分家の子息、…紅桜紅斗だった…


続く