ノア☆ザミ

オリ棒創作の設定・物語を投稿する場所

罪深き血-1

バシッと何かを叩きつける音が響く
「おりゃ!!」
私はいつものように特訓してた
裏庭に竹刀を持ち、藁で作った大きな人形?に叩きつけてた


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私は人よりも腕力が弱い…他人の手足ぐらいは切り落とせるけど、首とか胴体は恐らく切り落とせない…
昔にも同じことがあった…首さえ落とせれば殆ど苦痛を受けることなく事切れると聞いた…だからせめてもので首を狙ったが力が足りなかったからか…結局切り落とせなかった…
相手は苦痛で叫んだ、私は聞いてられず最早叩きつけるように切り落とした…
2~3回でやっと事切れた…
私は、己の軟弱ぷりに失望した…これでも人一倍鍛えてるつもりだったから…
だから、身体能力がどれだけ高くても腕力を鍛えなきゃダメだって…
「あ”-!くそっ…」
私は思わず竹刀を叩きつけた…
力加減を間違えて竹刀が折れてしまった…
(…こんなんじゃダメだ…まだ、まだ…っ)
折れた竹刀を片手に握り締める
「コウ…そろそろ、開店時間…」
「あー、今行く…」
劉が知らせてくれた…
落ち着かないと…感情的になると損だらけになる…
汗かいたから、先に湯あみしてから着替えて仕事に向かった
「ふぁ…っ」
「…眠い?」
「んーん、疲れが出ただけ」
「そう」
今日も今日とて黒いお客さんが来る
裏社会なだけであり、表立って言えない人たちがいる。
人間と言うのは、良くも悪くもズル賢い。
どっちを選んだって、嫌いか好きか別れる。
ムカついたから嫌う人もいれば、理由もなく嫌う人もいる。
好きなはずなのに、攻撃的になることもある。
「そうだ…コウ、今日はどうする?…来てるんでしょ?」
「っ…そうだね。気が向いたら…」
劉が思い出したように口を開く。
私は基本誰でも愛想良く接するが…唯一、唯一愛想良く出来ない相手がいる。
本来は、そんなことすれば最悪死刑にされるレベルだ。
けど、あの人もそれなりに情があるのだろう。
「……あの人も図太い神経してるよね…。いくら、国の当主とは言え、こんなとこに来てるの知られたら、一番の被害は間違いなく、コウなのに…」
「……」
劉は勿論知ってる…だからこそ強く言わない
私は───、婚外子であることも…。王家とも関係してることも…
「そう、だね…。許すかどうかは私が決めること。話すかどうかも私が決めること。」
思わず目付き鋭くなる。
嫌悪感から来るものだ…。

 

どうしても会いたくない…、そんな自分勝手さにも嫌気がある。

 ─────

 
劉が表に立って立ち向かう。
「どうしてもダメか…」
「うん、コウのこと思うなら…従った方がいいよ。」
スッと目付きが鋭くなる。
そして劉は口を開く
「───紅桜王家32代目の王さま…」
「……、また来る…」
一礼して店から出る。
変装のつもりなのか、少しみすぼらしい格好だった。
だが王家特有の赤毛だけは誤魔化せない。

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赤毛の男は店から出り軽く振り替える。
そっと呟く
「第一王子になれとは言わん…せめて私の側にいてほしいだけ…和泉との、最もの愛されるべき子だから…」

 

 「帰ったよ」
「そう、ごめんね…」
「あと、これ…」
「?」
手紙が二・三通も…、王家からと言うと、"依頼"だろう。
「…個人で会うつもりはないけど…、仕事を理由に会わせようとするとか…性格悪っ…」
"あの人"の意図が解っちゃうと、逆に腹が立つ…
「まぁまぁ…別に良いんじゃない?いつも依頼料は相場以上にくれてるんだし」
背後から声をかけられる
「白銀…(汗)」
彼女は白銀。
死天相談店の女従業員である。
大きな翡翠の瞳、短い髪で左サイドの三つ編みが特徴。
元暗殺者でもあるが、本人には《仕事以上》の感情はない。
公私を分別してるのは良いことだし、主力である劉と私がいない時に代わりに番してくれるから助かる。
「よく簡単に言うものだ…」
「だって合理的じゃん?依頼料さえくれるんなら、下手な仕事よりも稼ぎがいあるし」
「……。」
確かに…この御時世、稼がなきゃ生きてられない…。
それでも…感情的になってしまうのも、人間なのだ…
「んで?どんな依頼?」
「ん、えと…?」
「男爵の闇商売、人身売買…突然の落ちてきた謎死体…?」
「は?」
いや、確かに「は?」だ…
三枚目の依頼なんて、頭おかしくなったレベルだ
死体なんてゴロゴロある。
貧富の差が激しい御時世だ…餓死や麻薬による死など…
「いや、でも"落ちてきた死体"ってなに?」
「…転落死なら別に珍しくない…。」
劉の言うとおり…転落死なら珍しくないもないし不思議でもない。
「……現場に行ってみる?」
「そうだね…警備隊は良い顔しないだろうけど…この"依頼者の印"を見せれば、何も言わなくなるでしょ…。」
桜と桔梗をあしらった印。王家の紋章だ…。
王家からの依頼で動いてる我々を邪魔すれば、間違いないなく反逆罪に等しくなる。
「んじゃ、白銀…店番頼んだ」
「了解でーす」
白銀にお留守番を頼み、私と劉は依頼の場所に寄る。
あとで説明するときに面談しなきゃなんないのか…会いたくないな…。
事故現場に付くと、案の定警備隊の人に通せんぼされかけたが"例の依頼者"の封筒を見せると苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。
「ほぉん…転落死とは言い難い損傷ですね…」
直接遺体を見ると…転落する前に、既に死亡したと思われる痕跡があった。
…なんだろう…刃物で切り裂かれたような痕だな…
ざわざわする声を聞く限り、上で戦闘音ようなものは響かなかったらしい。
それなのに、突然落ちてきた死体…。
王家も無理難題を押し付けるな…
「おい、気が済んだら離れてもらおうか」
「あぁ…すみません」
私に声をかけたのは、警備隊の隊長である戸崎さん。
あからさまな不機嫌さにため息しつつも言うこと聞く。
「コウ…どう?」
「う~ん…いまいち情報が掴めてない…。分かったのは、死因は転落じゃなくて刃物による出血死…。」
「こっちも警備隊が調べたであろう書類を見てるけど…、ろくな仕事しないね…」
「……っ。」
「はい返す」
戸崎に書類を押し付ける感じに返す。
力が強く少し後ずさった。
「けほ…死天相談と言うのは随分乱暴に扱うんだな…。」
「おや?僻みですか?警備隊程度が無意味な調査を長引きかせて、どんどん犠牲者を出させてしまうおバカさんばかりの集まりじゃないですか。」
嫌味を込めた発言…だが本当のことしか言っていない。
間を置いてニッコリと口を開く。
「我々に意見するほどの功績を、貴殿方はお持ちでも?」

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「くっ…」
何も言い返せない戸崎を置いて、劉に声をかける。
「行きましょう劉…恐らくここには大したものは遺体以外は残っていない。」
「うん分かった」
戸崎は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。
バサッと赤と黒の羽織をなびかせた…
 

続く